最近、VRChatのワールドにおいて、入室に日本語を使えることを要件にするための仕組みを取り入れることにおいての正当性に関する話題が出ています。こちらに関して、書いてみたいと思います。
この記事の対象外とする事項
この記事においてはあくまでも一般的に言語によるアクセス制限が正当か、という点に関してカバーしていきます。サービス側がどのようにそういった制限を解釈するか、という点に関してはこの記事の対象外とします。そのため、この記事は全般的に言語による制限やその副作用、その他の懸念事項に関して取り上げたいと思います。
どのように実現するのか
一般的に言語的な制限に関しては複数の方法が存在します。以下、それを列挙してみます。
- ユーザーの所在地を根拠とする制限
- IPアドレスなどの位置情報を使用した制限
- 支払い情報(クレジットカードの登録など)をもとにした制限
- GPSなどの位置情報を使用した制限
- OSの言語などの設定情報をもとにした制限
- ユーザーの知識をもとにした制限
- 制限をかけず規約・お願いとしての縛り
実は、言語をもとに制限するのはなかなか簡単ではなく、例えば、1のような情報をもとにする場合、言語と所在地の情報が一致しない(例えば、日本語を話す在外邦人、日本語を話せない在日外国人)などがカバーされず、精度はそれなりに高いものの、一定の不公平感が出てくる手法です。また、想定がされない言語と地域の組み合わせにより、思わぬ問題やバグを発生させる原因ともなりえます。
2の手法に関しては、何らかの原因(共用PCである場合など)において使用言語と設定言語が異なる場合がある場合などがあります。
この記事を書くきっかけとなった、VRChatに関しては取得できる情報が限られているため、3番目の知識をもとにした(日本語クイズ)による制限と、2番目のOSの情報(タイムゾーン情報)を使用したようです。
知識をもとにした制限に関してはある程度精度があるのですが、この方法に関しては会話能力と読解能力に乖離がある場合について、問題が発生する可能性もあり、これも完全な方法とは言えません。
重要なのはなぜ制限をかけたいのか考えること
この議論に関して、最も検討する必要があるべきところは、「なぜ制限をかける必要があるのか」という点です。制限が不当であるかどうか、という点に関して重要になってきるのが、制限の必然性がどの程度あるか、という部分です。
制限が差別的かどうか、であるという話がありますが、これがその制限が差別的な根拠をもとに行われるのであれば、それは差別となりうるからです。
例えば、その理由が、「ワールドが日本語での会話をテーマにしているため、日本語での会話能力があることを前提としている」というものである場合においてはギリギリOKなのではないかと思います。
その理由が差別的である場合、例えば「外国人は態度が悪いから」というような理由であれば、差別となってしまう場合があります。
ただ、この場合、問題となってくるのは、前項のように技術的制限にはそれぞれそれなりの誤判定が存在しています。そのため、例えその理由が正当であったとしても機械的な制限をかけるのが適切であるのか、これが難しい点だと思います。
そのため、前項4番目のようにワールドの趣旨を伝えるようなメッセージとともに同意を求めるような方法でもいいかと思います。(例文に関しては先日考えてみました。)
「自分がされて嫌なことはしない」
しばしばこういった議論において放置される問題として、この「自分がされて嫌なことはしない」という点であると思います。
例えば、他の言語のサイトにおいて同じような施策が行われた場合にどう思うか、という点も検討する必要があると思います。
尚、VRChatに限らず、グローバルなネットワークでプレゼンスを持つということは否が応でも日本語圏のユーザーの代表として活動しているということにままなりません。
ユーザーにとって居心地のよい環境を作りたい、という部分は理解できるものの、ただ、そのプロセスにおいて理不尽さを感じるような施策が行われた場合、友好的な狙いをもって訪れる方を落胆させる結果が出てしまった場合、あまり気分が良いものではないかもしれません。
また、逆に、他の非日本語圏の場所においてこのような施策が講じられる可能性もあり、この場合、同じ体験をさせられてしまう可能性もあるかと思います。ですので、どのような施策を行うにあたっても慎重に検討することが必要なのではないかと思います。